『零式 』
このCDの出発点は、「オリジナリティというものの大半はその人の音楽履歴を透過した身体性、もっといえば手癖にすぎないんじゃないか」という考えからだった。自分の即興演奏の録音を分析し、そうして採集された癖やパターンをもう一度音楽に最構築していくという作業は、無意識をテーマにしたパズルのようだった。そして際限なくとっ散らかっていった音を再び収斂させたのは、皮肉にもバイク事故で骨折して動かなくなってしまった体だった。楽器が弾けない状況が音への衝動を呼び覚まし、焦燥感は作品化する原動力となった。2年を費やした身体性を巡る旅は意外な形で幕を閉じ、そして何回転もして結局戻ってきた自分の根っこ、輪ッかのイメージと合わせて「零式」(ぜろしき)≒「セロ弾き」と名付けたみた。

全作曲、演奏:坂本弘道
Engineered by 小俣佳久
Jacket art by 天野天街 with 水谷雄司(Mac operator)
Adviser 佐竹美智子
1999 manufactured by OFF NOTE on-33

Executive Producer 神谷一義
演奏行為の中で身体に堆積した癖やパターンをもう一度、音楽に再構築していく作業を通してたちあらわれた無意識のイメージパズル。身体を巡る旅を繰り返して究極辿り着いた元初の風景。身体の内奥に渾然一体となって烈しく妖しく蠢く幻惑のノスタルジーとトートロジー。「零式」。内なる円環のイメージをあやかしの至高美にまで高め、外在化し方法化し得た異界のチェロリスト、奇蹟の到達点。
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